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外務委員会(平成25年11月8日 議事録)

○玄葉委員 おはようございます。玄葉光一郎です。
 岸田外務大臣におかれましては、国益、そして日本国の歴史、文化を背負って日々職務を遂行されているというふうに想像いたします。
 日本外交の基本姿勢についてお伺いをしたいと思うんですけれども、恐らく、日々職務を遂行する中で実感として感じておられるのが、パワーバランスの変化ということではないかと思うんです。
 岸田外務大臣もたしか二十年前の初当選ではないかと思います。私も二十年前に初当選して、やはり二十年前と明らかに違うのは、パワーシフトが起きているということです。それを日々、国際場裏で実感するという状況ではないかというふうに想像します。
 この間、小川さんがこの場で、世界各国の、特にアメリカと日本の世界全体のGDPに占める割合の話をしておられました。確かに、経済力だけ見ても、世界全体で七十二兆ドルある中で、かつては、米国一国で四割、日米で四割という時代もありました。今は日米で三割です。
 これからどうなるかといえば、やはりこの新興国の台頭というのは、このパワーバランスの変化、日米欧の相対的な力の低下というのは不可逆的だというふうに一定程度は言わざるを得ないというところがあるのではないかというふうに思うんです。
 この間、イアン・ブレマーさんという一九六九年生まれの若い方が、Gゼロということを言っていました。主導国のない世界、新興国の台頭、それぞれ新興国の価値観が違う、日本も欧州も自分のことで手いっぱい、彼が言うにはですよ。アメリカがコストとリスクをとれなくなってきた、アメリカと中国はフレネミーである、フレネミーというのはフレンドエネミーだということを言って、ある面、なるほどなという側面も若干ある。
 だけれども、こういう見方も含めて、このパワーシフトの真っただ中にあって、日本外交はそういったパワーシフトにどういう対応をしていくお考えか、基本的な姿勢をお尋ねしたいと思います。

○岸田国務大臣 まず、玄葉前大臣も私も、平成五年に初当選をいたしました。確かに、二十年前、初当選した当時のことを考えますときに、日本の置かれている環境、また国際社会のパワーバランスも本当に大きく変化したなと実感として感じております。
 その中にあって、まず、日本外交は、引き続き今日も基軸は日米同盟であるということは間違いないと思っております。ただ、あわせて、刻々と変化する国際情勢に応じて、日本の置かれている立場、状況、これについては冷静に判断をしなければいけないと思いますし、外交のアプローチもこうした状況の変化に合わせて変化させていく、こうした対応も必要であるということは感じております。
 外交を考える際に、地球全体を俯瞰しながらという言葉が最近よく使われますが、こうした地球全体を俯瞰しながら戦略的に外交を進めていかなければならないというふうに考えておりますし、自由民主主義、法の支配、さらには人権等の基本的価値を共有する国々との連携協力、こうしたものも大事にしていかなければならないと思います。そして、日本はもちろんでありますが、世界全体の利益の増進を図る、こうした考え方も重要だと考えております。
 いずれにしましても、日本一国でみずからの安全を守ることはできなくなっている。また、米国自身も、一国のみで国際社会の平和や安定を確保できる、こういったことは考えていないと思います。やはり、国際社会において、各国が連携をしながら地域や国際社会全体の安定を考えていかなければいけない時代が来ていると考えております。
 そういったことから、我が国におきましても、今の政権において、積極的平和主義、こういった考え方を改めて国際社会に訴えて理解を求めている、こうした努力を続けております。

○玄葉委員 こういった大きなパワーシフトの中で、今、どう対応するかということについて丁寧なお答えがあったんですけれども、もちろん、日本自身の経済力を再生させる、これも大事だと思うし、例えば中国、韓国は、少子高齢化社会、かなり速いスピードで日本の後を追いかけていますから、真っ先にそれを日本自身が解決してみせるとか、そういったことも大事だと思いますが、事外交に関して申し上げれば、私も、日本自身の防衛力を強化したり、日米基軸のもとで日本の役割をさらに強化したり、それらがまず基本だと思うんですが、それらだけで果たしてこのパワーシフトに対応できるのかという危機感が実はあります。
 新興国のピークアウトというのは、国によって違いますけれども、恐らく二〇三〇年とか二〇三五年ぐらいまで続くんじゃないかと思うんですね。何でそれを補うのかということじゃないかと思います。勢力均衡、バランス・オブ・パワーという概念がありますけれども、これはやはり、冷厳な安全保障の状況を直視すれば、これはこれで私は大事だと思うんです。ただ、どうもそれだけではこれからの外交をやっていけるかなという思いが私にはずっとこの間あるんですね。その中で、では、日本は何をして、ある意味、穴を埋めるというか、そのパワーシフトに対応するのかということじゃないかと思っています。
 演説みたいになっちゃうんですけれども、きのうも私、丁寧に質問通告しましたので、おっしゃっていただいたのかと思うんですけれども、私も、法の支配とか民主主義だとか、平和をつくり育てるだとか、自由貿易だとか、欧米と日本である意味一緒に育んできたというか、やや日本はおくれて入っていったようなところも若干あるかもしれませんけれども、あるいは人間の尊厳なんかもそうかもしれないですね。
 人間の安全保障という概念を大事にしてくださいと、かつて外務委員会で私申し上げた記憶がありますけれども、そういう価値観というか、そういうものを、アジア太平洋あるいはアジアと欧州をコネクトさせる、連結させる、そういう役割を日本が持たなきゃいけないんじゃないか。ずっと私はそういうことを意識していました。十分な結果だったとは言いません。ただ、ずっと意識をしてきました。
 言葉をかえて言えば、ルールをつくる力というか、秩序をつくる力というふうに申し上げてもいいかもしれません。その力はソフトパワーです。そういうソフトパワーをやはり磨いていく。このアジア太平洋の秩序をつくるに当たって、まさに先ほどおっしゃったような民主主義、法の支配、あるいは自由貿易、人間の尊厳、こういったものを導入していく、その先頭に立つんだ、そういう気概が日本外交に一番必要なんじゃないか、特にこの東アジアのレジームにそれを導入するということが大事なんじゃないかというふうに思いますけれども、もう一言いただけますか。

○岸田国務大臣 私も外務大臣の仕事をさせていただく中にあってたびたび申し上げておりますが、まず、外交において、三本柱として、日米同盟の強化、近隣諸国との外交推進、そして経済外交の推進、この三つの柱を立てて仕事を進めています。こうした三つの柱を中心として、まずは日本の国益をしっかり守っていかなければいけない、これを強く感じています。
 しかし、今おっしゃったように、それだけにとどまってはならないと私も思っております。先ほど申し上げた基本的な価値観、自由とか民主主義とか、法の支配とか人権とか、こうした基本的な価値観を共有する国々と連携する。さらには、やはりグローバルな課題について私たちの国はもっと積極的に貢献していかなければならない、こういったことも感じています。中東和平ですとか、軍縮・不拡散ですとか、保健ですとか環境ですとか、こうしたグローバルな課題に日本もしっかり汗をかき、貢献することによって、国際社会において我が国は存在感を示すことができるんでしょうし、おっしゃるように、アジアの地域そして国際社会において連帯や連携を生むことにつながっていく、こういった考え方も重要なのではないか。
 国益を守ると同時に、こうした課題に日本も積極的にかかわっていくことによって、日本の存在感や国際社会の連携に貢献していく、こういった考え方もあわせて持ち、努力をしていかなければいけない、こういったことについては強く感じております。

○玄葉委員 後者のところはそうなんですけれども、多分まだ十分伝わっていないのかもしれないんですけれども、結局、このパワーシフトは、特にアジア太平洋で顕著だと思うんです。もちろん、ブラジルだとかトルコだとかも新興国として台頭してきていますけれども、やはり、この東アジア、アジア太平洋での新興国の台頭に本当にどうやってバランスさせていくのか、単なる従来のパワーだけじゃない形でバランスさせていくのかということだと思うんですね。
 私はそれをネットワーク外交と呼んだんですけれども、つまりは、いわゆるルール形成力というソフトパワーを磨いていく、そしてそれをもって、先ほど申し上げたような価値をこのアジア太平洋に上手に導入していく。これは日本の国益に直結すると思うんですよ。逆に言うと、それができなかったら、やはりなかなか日本は大変だなと思うんですね。
 ですから、これは、あえて抽象的な問い方をしているんですけれども、この分野に相当力を入れていかないと、これから十年、二十年、なかなか大変なことになるというふうに思いますが、いかがですか。

○岸田国務大臣 まず、基本的に御指摘のとおりだと思います。
 ルール形成力というお話がございましたが、こうしたアジア太平洋地域の厳しい安全保障環境を初め、現状を考えますときに、この地域においてのパワーバランス、安定ということを考えるときには、やはり、経済のみならず、さまざまな分野におけるルールの形成に我が国が積極的にかかわっていく、こうした視点は大変重要だと思います。
 経済連携につきましても、TPP、RCEPを初め、今、さまざまな経済連携の動きがあります。その中にあって、我が国は、受け身ではなくして、このルール形成に積極的にかかわっていく、こういった姿勢が重要だと思いますし、それ以外の分野におきましても、我が国は、みずからルール形成に積極的に貢献する、参加をする、汗をかく、こういった態度は大変重要だと思います。そういったことを通じてもアジア太平洋地域の安定や繁栄に貢献していく、こういった考え方は大変重要だと私も認識をいたします。

○玄葉委員 先ほど積極的平和主義という言葉が出ましたけれども、これは、これまでの日本外交と何が違うんでしょうか。

○岸田国務大臣 まず、今我が国の置かれている安全保障環境、またアジア太平洋地域の戦略環境は大変厳しいものがあり、これは一層厳しくなってきている、こうした現状を感じています。大量破壊兵器あるいは弾道ミサイルのような脅威も深刻化している、こうした現状にあります。加えて、サイバーですとか宇宙ですとか、国境を越えた新しい脅威も現実のものになっています。こういった状況におきまして、もはや我が国のみで我が国の平和を守ることは難しくなっている、まずこうした基本的な認識があります。
 よって、我が国は、地域や国際社会、こういった広い範囲の平和や安定をしっかり守っていくことによって我が国の平和や安定も守っていく、こうした考え方に立たなければならない。よって、我が国は、従来以上に地域や国際社会の平和や安定に貢献していく、こういった努力を行っていかなければならない。こうした考え方のもとに、この積極的平和主義ということを訴えさせていただいているわけです。
 従来とどこが違うのかという御質問ですが、もちろん、従来から、こうした考え方に基づいて、シリアに対する人道支援ですとか、あるいはイランの核問題につきましても平和的解決に向けて汗をかくとか、あるいは国連において人間の安全保障の考え方に基づいて貢献するとか、こうした努力は続けてきました。しかし、今、我が国を取り巻く環境が一層厳しくなる中にあって、改めて、こうした積極的平和主義という言葉を使い、我が国の姿勢を国際社会の中においてしっかりと説明していく、そして理解を求めていく、こういったことが必要なのではないか。こういったことから、積極的平和主義、こういった言葉を使いながら、我が国のこうした問題に対する姿勢の説明に努めている、こうしたことであります。

○玄葉委員 そうすると、必ずしもこれまでの日本外交と大きく違うということよりも、これまでの日本外交の姿勢をより強化して、それを、積極的平和主義という言葉を使って印象づけつつ説明をする、そういう観点でこの積極的平和主義という言葉を使っているというふうに理解していいですか。

○岸田国務大臣 おっしゃるように、国際協調主義あるいは我が国の平和主義、この基本は、根幹は全く変わっておりません。しかしながら、状況が変化する中にあって、こうした問題に対する危機感や重要性、こういったことも踏まえて、我が国の態度をしっかりと国際社会の中で示していく、そして、より以上に、今まで以上にこうした貢献ができる、そして現実においてどういった貢献があるべき貢献なのか、こういったことも含めてしっかりと検討し、努力をしていく、こうした態度を大切にしていきたいと思っております。

○玄葉委員 そうすると、今おっしゃった含意には、これまでよりも、例えば、集団安全保障により積極的に参加をしていこうということであるとか、あるいは武力行使の一体化論もやや限界に来ているので集団的自衛権の解釈を変えようとか、そういうことも含めて積極的平和主義という言葉を使っているということですか。

○岸田国務大臣 積極的平和主義の考え方については、今申し上げたとおりであります。
 その考え方において、我が国はしっかりと国際貢献を行っていきたい。現実の国際社会、そして我が国の置かれている環境を見た際に、具体的に貢献するためには何が必要なのか、どういった制度や法律が必要なのか、こういった点でさまざまな検討を行っている、その中で、今おっしゃったようなことも今議論として俎上に上がっている、このように認識をしております。

○玄葉委員 では、基本的には従来と変わらないんだが、それを強化するために、例えば、集団安全保障により積極的に参加をするとか、集団的自衛権の解釈見直しを含めて、それも検討しながら積極的平和主義というものを具体化したい、簡単に言うとこういうことですね。

○岸田国務大臣 御指摘の集団的自衛権の議論につきましては、今まだ引き続き安保法制懇において議論が行われている、この議論の行方を見ながら、最終的には、政府としてどう考えるか、これを整理していかなければいけない、まだそういった段階にありますが、基本的には、変化する、そして厳しさを増しているこの我が国の安全保障環境の中で、我が国として具体的に何をするべきなのか、こうした考え方に基づいてさまざまな議論が行われている、このように認識をしております。

○玄葉委員 私だったら、積極的平和主義を仮に説明するとすると、私が別に補う必要はないんだけれども、やはり、さっき申し上げたようなルール形成力でそういうソフトパワーを磨いて、日本の平和をつくり育てる力というものをさらに強化していくんだということをつけ加えて説明していくとこの言葉というのは意外と生きる可能性はあるというふうに実は私は思っていて、そういうものがないまま説明をしていくと、では今までと何が違うんだとか、単なる集団的自衛権の解釈を見直すということだねということに多分一般的な理解はなるんだろうなと。一応そういうふうに私としては思うので、提言として申し上げておきたいと思います。
 その上で、シリアの問題は本当はじっくりやりたいんですけれども、きょうは余り時間もないので、二、三だけお聞きをしたいと思います。若干今の問題と関連させて、その部分だけ申し上げたいと思うんです。
 まず、一連のシリアの問題、シリアは、私が閣僚だったときも、まさに二〇一一年三月以来のアサド政権の市民デモへの大規模弾圧から始まっていますので、例えば、反体制派のグループと私も会ったり、いろいろしてきました。ペルソナ・ノン・グラータなどというようなこともありました。いろいろあったんですけれども、特にロシアのこだわりとかがあってP5がまとまらず、あるいは国際社会がなかなかまとまらずということがこれまでありました。
 それはともかくとして、一連の、一線を越えたとオバマ大統領が発言をして以来の、あるいはその直前からの、アメリカ、オバマ政権の判断あるいは結果、あるいは先ほど申し上げたような発言、これをどう外務大臣としてはごらんになっていますか。

○岸田国務大臣 シリアの問題につきましては、玄葉前大臣も、東京でシリアの制裁に関する会議を主宰されるなど、大変積極的に取り組んでこられた。こうした御努力には心から敬意を表し申し上げたいと存じます。
 そして、こうしたシリアの動きについてですが、まずもって、シリアにおいては、化学兵器問題については一つの合意のもとに今努力が続けられていますが、基本的には、まだ通常兵器によって暴力行為は続いております。シリアの状況は、依然深刻な状況にあると認識をしております。やはり、暴力行為の停止、そして政治的な対話の開始、さらには非人道的な状況の改善、こういったことについて引き続き努力をしなければならない。シリアの問題は、化学兵器の問題にとどまらず深刻であり、そして今、引き続き継続している問題だと認識をしております。
 その中にあって、化学兵器問題に関する議論につきましては、結果として、米ロが合意する形で、外交手段によって解決を図ろうという動きが進んでいる、このことについては基本的に我が国も歓迎をしているところであります。そして、米国のその間のさまざまな動きあるいは評価についてさまざまな議論があることは承知しておりますが、その米国とて、まだ継続している、深刻化しているこのシリアの問題を一国で解決できるとは思ってもいないでしょうし、実際、それは難しいと思っています。
 引き続き、国際社会と連携して、国際社会全体でこの問題に取り組むことによって、暴力行為をやめさせ、政治対話を開始させ、そして非人道的な状況を改善する、こういった結果につなげていかなければならない、このように考えております。

○玄葉委員 私は、一線を越えたと発言されたときに、同盟国の米国だから余り申し上げませんが、ただ、大丈夫かなと思いましたですね。やはり、本来必要な戦略的な曖昧さというのをある時点で捨てちゃって、これは本当に大丈夫かなと思っていました。その後は今おっしゃったとおりなんですが、結局、ロシアが一つの提案をして、やや渡りに船的に乗ったんですね。日本として、基本的には外交手段での解決ですから、歓迎なんだけれども、やはり、一旦軍事介入しますと言ってやめたというのは、日本国の同盟国である米国がそういう態度をとったことが、日本の抑止力という点で大丈夫かなというふうに思う人がやはり当然出てくるのではないかというふうに思っているんですね。きょうはこれは余り申し上げません。
 その上で、きょう聞きたかったのは、もしアメリカがこのときに軍事介入していたら、これは仮定の話ですけれども、あるいはこれからもあるかもしれないから、その場合の国際法上の根拠というのは一体どういうものになるんでしょうか。

○岸田国務大臣 まず、シリアの化学兵器の問題につきましては、国際社会がどのように対応するのかということにおいて、北朝鮮を初め、他の大量破壊兵器を持っている国々に対してメッセージを与えることになるということからして、我が国にとりましても、シリアにおける化学兵器に対する国際社会の対応は、これはもう決して遠い国の話ではなくして、我が国に直接影響する大変重要な問題だと認識をしております。そういった認識のもとに、こうした動きを注視し、対応を検討してきたわけであります。
 ただ、今、御質問は、武力行使が行われた場合に、その支持をする根拠は何かという御質問ですが、仮定に基づいてお答えするのはちょっと適切ではないのではないかと考えます。

○玄葉委員 政府参考人はこの問題では来ていないですか。一般論として、こういった人道的軍事介入のいわゆる国際法上の根拠というのを答えられますか。

○岡政府参考人 お答え申し上げます。
 まず、イギリスについてでございますけれども、英国政府は、軍事行動への参加につきまして議会の承認を求める過程におきまして、シリアにおける軍事行動の合法性に関する法的立場についての見解を公表したというふうに承知してございます。
 また、今委員お尋ねの人道的介入についての政府の見解についてでございますけれども、一般に、人道的介入とは、他国で行われている非人道的なことをやめさせるために、武力行使を含め、当該他国に介入することを指すものというふうに考えられます。このような人道的介入につきましては、学説上は種々の意見があるというふうに承知してございます。
 我が国といたしましては、人道的介入がいかなる状況、条件のもとで、また、どこまで許されるのかという点につきましては、国際法上、いまだ形成途上の課題であるというふうに認識しております。

○玄葉委員 これは恐らく、米国が軍事介入していたら、あるいはこれからするかもしれませんけれども、この国際法上の根拠というのが大きな問題になるんですよね。
 もう外務大臣御存じのとおり、正当化されるのは、個別的自衛権、集団的自衛権、そして集団安全保障しかないわけです、今のところ。そう言われているわけです。コソボの例が唯一ありますけれども、そのときに、人道に対する罪を理由に介入した、こういう経緯がある。
 私、きょうここで申し上げたいのは、日本政府の対応が悪いとかいいとかということを申し上げたいんじゃなくて、今あえて説明をしていただいたのだけれども、結局、こういうときに、イギリスは何と言ったかということなんですね。
 私、シリアの一連の経緯をずっと報道等で見ていて思ったのは、イギリスは、当然、イラクの戦争で大量破壊兵器はなかったという教訓を踏まえて、これもよしあしあるんですけれども、議会にかけたわけですね。そのときに、イギリス政府は、人道的介入の国際法上の根拠を説明したんですね。私、それは驚いたんですよ。
 先ほどおっしゃったように、まだ学説上は途上だというふうに申し上げてもいいと思うんですが、イギリスは、あのとき私、メモしたんですけれども、緊急かつ大規模な著しい人道上の苦難の存在、そのことの説得力ある証拠の存在、武力行使以外に代替案がないこと、必要最小限の武力行使であることということで、国際法上の根拠をイギリス政府として説明していたんですね。
 私、冒頭のことに関係して申し上げたかったことはこういうことで、要は、これもソフトパワーですよね。イギリスの外交というのは、何だかんだ言って、やはり各国とも一目、二目置いているというところがあると私は感じます。
 法の支配ということを、日本国として、日本外交として、これから極めて重視すべきだと私は思います。重視して、アジア太平洋にこの法の支配の秩序をつくり上げるというのは、やはり日本の国益にダイレクトに直結する、そういう問題だと思いますけれども、そういうときに、外交インフラとして、国際法の世界で日本国あるいは日本外務省が強くなるというのはすごく大事なこと。地味なように聞こえるかもしれないけれども、やはりすごく大事なことだと私は思っているんですね。これは本当に一例なんだけれども。
 これはすごく地道です。一朝一夕にはできません。十年とか二十年という中長期的視点でぜひ外務大臣に意識してもらいたくて申し上げたんですけれども、今も優秀な人たちが外務省には多いです。多いけれども、より本格的に、そういう人材、外交インフラとなる人材を、とにかく世界の一級だという人たちを育てるというのが、実は、中長期的に見ると、このパワーシフトに対応する上でも、本当の一例なんだけれども、非常に大事なことだというふうに思いますが、いかがですか。

○岸田国務大臣 大変貴重な御指摘をいただいたと感じております。
 先ほど、ルール形成力ということで、経済連携の話とか安全保障の話をさせていただきましたが、その基盤となる法の支配において、国際法の世界において我が国がこのルール形成あるいは議論をリードする、こういったことは、さまざまなルールづくりの中においても大変基本的な課題だと、お話を伺っておりまして感じました。貴重な御指摘をいただいたと感謝申し上げます。

○玄葉委員 外務省の中で、この国際法の分野で日本がさらに強くなるためにどうするかということについて、ぜひ一度検討してみていただきたいというふうに思います。
 その上で、日中の問題は、まさにパワーシフトの端的な例であります。十三億人の人口で、GDPは日本を追い抜きました。これから恐らく、アメリカを二〇二〇年あるいは三〇年に抜くのではないか。逆に、抜かないと言う専門家もいますけれども、でも、この中国の台頭に対してどう対応するかということであります。
 おとといの委員会でも出ておりましたが、一度、中国の海洋進出の状況を、南シナ海と東シナ海について、歴史的にこの外務委員会できちっと説明をしてもらいたいというふうに思います。

○金杉政府参考人 お答えいたします。
 まず、南シナ海についてでございますが、一九五〇年代から、中国は、いわゆる九つの破線の内側の海域に関して主権を有しているという主張を開始いたしました。
 それを踏まえまして、例えば西沙諸島に関しましては、一九五四年にフランスが西沙諸島から撤退した後、五六年には西沙諸島の東側を事実上支配いたしました。そして、七四年には、ベトナムと交戦をして、西沙諸島全域を事実上支配するに至っております。
 続きまして、南シナ海、南沙諸島ですけれども、南沙諸島に関しましては、九〇年にソ連海軍がベトナムのカムラン湾から撤退を開始し、九一年から九二年にかけて米軍がフィリピンのクラーク空軍基地、スービック海軍基地から撤退を開始した後、九五年から、漁民の避難施設を名目に南沙諸島のミスチーフ礁に構造物を設置いたしました。これが、九九年ごろまでには、ヘリポートも備えた恒久的な施設に増強されております。
 それから、中沙諸島でございますけれども、二〇一二年の四月にスカボロー礁海域を航行していた中国漁船に対してフィリピン海軍が臨検を実施して以降、中国公船が当該海域に常駐する状況になっているということでございます。
 そして、こうした一連の動きの中では、中国の公船や海軍の艦艇がベトナムやフィリピンの漁船に発砲するといった事案も生じております。
 さらに、中国による管轄権の強化という観点からは、中国は九二年にいわゆる領海法を制定いたしまして、南シナ海の東沙、西沙、中沙、南沙の各諸島、さらには尖閣諸島も中国の領土だという表明をしております。さらに、二〇一二年には、西沙、中沙、南沙及びその海域を管轄する三沙市というのを設置したということは先生御承知のとおりでございます。
 それから、東シナ海でございますが、今御答弁申し上げたのと重複を避けて申し上げれば、まず中国の海上法執行機関の動向として、特に九〇年代以降から、日本の排他的経済水域において中国の海洋調査船が日本の同意を得ない調査を行うという事例が確認をされ始めました。また、二〇〇八年十二月には、中国の国家海洋局所属の公船二隻が尖閣諸島周辺海域に初めて侵入をし、その後、現在に至るまで合計七十一回に及ぶ領海侵入が発生しております。
 また、人民解放軍の動向としましては、二〇〇四年十一月に中国の原子力潜水艦が国際法違反となる我が国領海内での潜没航行を行ったほか、二〇〇八年十一月には、海軍の艦艇四隻が沖縄本島と宮古島の間を通過して太平洋に進出したことが初めて確認をされております。その後、同様に南西諸島を通過して太平洋に進出する回数というのが年を追うごとに増加しているという状況にございます。
 加えて、中国のヘリコプターや固定翼機が海自艦艇に近接飛行を行ったり、あるいは火器管制レーダーが照射されたりといった事案が発生していることは先生もよく御承知のとおりでございます。
 以上でございます。

○玄葉委員 ありがとうございました。
 海洋進出の意図はと聞くと、私のときも答弁しなかったので、背景を簡単に説明していただけますか。

○岸田国務大臣 今答弁をさせていただきました中国の積極的な海洋進出の背景についての御質問ですが、一般的には、中国における海洋権益に対する関心の高まり、または領土、領海に対する防衛意識、さらにはシーレーンに対する関心の高まり、こういった諸要因が指摘されていると承知をしております。

○玄葉委員 ちょっと時間がなくなってきたんですけれども、中国の外交政策というのは変化してきているんですかね。今までの延長線上なんですかね。
 韜光養晦という言葉をかつて中国は使っていた。要は、光を韜(つつ)み養い晦(かく)すということだから、能あるタカは爪を隠すんだということで、見えないように力を蓄えていくんだというのがこれまでの中国の外交政策の一つの特色をあらわす言葉だったのではないかというふうに思うんですけれども、どうもそうではなくなってきているのかなと思う側面も出てきている。
 核心的利益という言葉がありますけれども、これも、当初はチベット、台湾。そこから南シナ海に広がって、さらには東シナ海にも広がっているのかどうか、こういう議論がある。こういったことについてはどうですか。

○岸田国務大臣 中国の外交政策が変化しているのではないかという御指摘ですが、中国の外交政策等につきましては、我が国は、大きな関心を持って動向を注視しております。
 その中で、例えば先月下旬ですが、共産党の会議におきまして、習近平主席の重要講話というのが行われ、その中で、今後の周辺外交の基本方針として、自国の最重要課題である経済発展のために、隣国との関係をよくし、パートナーとすること、隣国を安心させ、豊かにすること、隣国と親しくし、誠心誠意の対応をしていくこと、こうした発言があったこと、こういったことにも注目はしております。
 中国自体、従来から、平和的発展の道を歩むことを対外政策の基本として掲げているということでありますが、こうした最近の発言等を注視しながら、一方で、先ほど答弁させていただきましたように、周辺海域における海洋活動は活発化しております。我が国を含む地域、国際社会、共通の懸念事項になっているというのが現実としてあるわけです。
 ですから、こうした中国の言動については注目をしておりますが、言葉だけでなく、実際の行動においてどのような外交が展開されるのか、引き続き関心を持って注視をしていきたいと考えております。

○玄葉委員 今、意思疎通はどうされていますか。

○岸田国務大臣 日中の外交当局間においては、尖閣諸島をめぐる状況も含めて、さまざまな課題について、そしてさまざまなレベルにおいて、意思疎通を行ってきております。具体的な課題を通じて、そしてさまざまなレベルでの議論を積み重ねることによって、ぜひ高い政治レベルでの対話につなげていきたいということで、働きかけを続けております。
 ぜひ、個別の問題があるからこそ対話をしなければならない、こうした我が国の姿勢については、今後もしっかりと働きかけの中で訴えていきたいと思いますが、中国から、それにしっかりと応じてくる、こうした反応があることを期待したいと思っています。

○玄葉委員 この間、米国の政府にこれまで入っていた方々、五、六名の方々と二日間にわたっていろいろ議論したんですけれども、その中で、一つの指摘として、例えば安倍総理は、これは、よしあしはいろいろあるんですよ。靖国の問題でいえば、かつて総理大臣のときに靖国に行かなかったことが痛恨のきわみだ、こういうふうにおっしゃった。私も、一衆議院議員のときは靖国神社へ行っているんですけれども、閣僚のときは行きませんでした。外務大臣もそうかもしれませんけれども。
 もし、意思疎通して何か前に進んで、靖国に行きましたみたいな話になっていくと、そういうことがあり得るということになったときには、これは韓国の問題にも言えるんですけれども、中韓は動けないというところもあるんじゃないかという指摘が米国側からありました。
 きょうはちょっと、もうあと五分しかなくて、小里さんに来てもらっちゃったのでそちらの質問に移りますけれども、そういう問題もいろいろ考えなきゃいけないし、また、私が申し上げてよいのかどうかというのはあるんですけれども、かつての一九三〇年代の日本もややそうだったんですが、結局、経済力を持ちました、軍事力を持ちました、でも、では国際社会全体をどうしようかとか、そういうところまでまだ責任感が及ばない状態が今の中国だというふうに私は思っているんですね。
 ですから、冒頭申し上げたように、法の支配を導入するということを初め、ルールをつくる、東アジアの将来をクールヘッドで、毅然と対応しながらクールヘッドでやはり日本は説いていかなきゃいけない。そこに、さらにいろいろな意思疎通で、これも譲れないところは絶対譲れないので、そこの一線をきちっと守りながら知恵を出すということをどこか適切なタイミングでやっていくということなんだろうなというふうに思います。きょうはもう指摘にとどめます。
 最後に、TPPでありますけれども、たくさんTPPは質問があるんですけれども、きょうは一つだけお聞きしたいと思います。
 非常に摩訶不思議なことが起きているのは、何か報道で、重要五品目の五品目に当たる五百八十六品目ということがよく出ているんですけれども、五百八十六品目って何ですかと聞いたら、一切資料も出さない。私はちょっと信じられない現象なんですけれども、これはどういうことなんでしょうか。

○小里大臣政務官 お答えをいたします。
 これまで我が国が締結をしたEPA、FTAの中で関税撤廃をしたことのない品目の中から、米、麦、牛肉・豚肉、乳製品、甘味資源、いわゆる重要五品目と言われる分野に分類をし、合計をしたものが五百八十六ラインであるということであります。
 これは我が国の立場で分類をしたものでありまして、相手国には伝わっておりません。したがって、これが明らかになれば、相手国にとって我が国の立場を予断し得る、そして交渉上不利益をこうむることになる、そういうことであります。

○玄葉委員 これは実際上はどういう状況かというと、関税譲許表というのは、そもそも英語で全部出ています。これはプロが見れば大体想像できます。もちろん、五百八十六にこれが入っているのか入っていないかというのはもしかしたらわからないかもしれないけれども、でも、ほとんど想像できるんですね。それをあえて、何か隠して交渉しますというのは、私からすると、何てナンセンスなことをやっているんだと。はっきり言って五百八十六のレベルじゃないですからね、現実は。だから、そんなことにこだわる必要はない。
 もっと言うと、何か、西川さんにも出していないというわけです、部会というか調査会で聞くと。あり得ないでしょう、そんなこと。あり得ないと思いますよ。私、西川さん以外の当事者にも何人か直接聞くと、もう知っていますよね、現実は。見ていますよね。
 だから、余りそういううそを重ねちゃうと、本当に国民の皆さんから、この問題で結論が出たときに、私は信頼されなくなると思う。
 だから、政府・与党一体化という議論が当然あるんだから、与党の要路にいろいろなことを説明するのはある意味当たり前なんですよ。私はそう思う。だから、与党の要路には説明しますが、秘密保持の観点からあとは出しませんとか、やはりもっと誠実に向き合った方が私はいいと思いますが、いかがですか。

○小里大臣政務官 うそにうそを重ねるとおっしゃいましたが、そのことには私は反論がございまして、まさに先生が御指摘をいただきましたように、プロが見てもわかりにくいところはあるんです。我々が見ても、米に含まれると思っていたラインが砂糖にあったり、それから砂糖に含まれると思っていたラインが五百八十六品目以外にあったり、これは実に複雑であります。もしそこを明らかにすれば、例えば五百八十六ラインが明らかになれば、我が国が最センシティブとしている品目、ラインが全部明らかになる。すなわち、我が国の弱みが相手に伝わってしまって、そこをつけ込まれるおそれがあるということでございます。ほかにもいろいろ理由はありますが。
 また、西川委員長のことをお尋ねでございます。彼について言えば、あえて最近になって情報を提供するまでもなく、頭の中にあると思います、常日ごろから。
 また同時に、今回、この厳しい交渉を、政府・与党一体となって国益を守っていく交渉をしていかなければならない、そのための決議をしたわけであります。まさに、その決議に基づいて、政府・与党一体となってこの交渉に臨む、そのために必要な情報については可能な限り与党側には提供しておるということであります。

○玄葉委員 うそという言葉を使ったのは、本当に、西川さんにも一切出していません、ここの、私たちに出している、当時の民主党の部会に出しているのと同じです、こう言ったんですよ。それは本当だなと言うと、本当ですと農水省の方々がおっしゃったのは事実です。だから、それは明らかなうそだろうと私は思うんです。
 やはり必要な情報は要路に出せばいいと思うんです。その上で検討するのは当たり前の話だし、僕は、五百八十六というのに余りこだわる必要はないと思いますよ。本当に国益に一番合致する品目かどうか、そういうことをきちっと精査して対応すればよいのであって、余りそんな瑣末なことで情報を隠すということをする必要はない、そんなことは全然別に弱みじゃない、だから意味がないというふうに私は思います。
 私、これから特定秘密というのはあると思うんです、これは特定秘密保護法案とは別だといっても。実際に職務をしていて、特定秘密というのは出てきます。だから、本当に漏らしちゃいけない、秘匿すべき秘密というのはあるわけです。だけれども、その判断を大臣がやるわけですね。あるいは役所がやるわけですね。そういうときに、何だ、この五百八十六品目まで隠すのか、秘匿するのか、そういう人たちにその裁量を全部与えるのかということになれば、本当に大丈夫なのかと、これは普通に考えてもなりますからね。
 だから、やはり秘密主義が過ぎるというのが私の今の率直な思いなので、そのことを忠告として申し上げて、若干オーバーして申しわけありませんでしたけれども、私の質問を終わります。
 どうもありがとうございました。
 

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